携帯はなぜ長期利用者は冷遇されて、新規のみ優遇されるのか
MNP優遇策がある理由
新規事業者などが回線数を確保するためには、自社にしかないオリジナルサービスなどで新規開拓を行う、あるいは既存事業者から顧客を奪うなどするしかありません。
すでに大半の人が携帯を持っており、毎年100万人しか増えない新規顧客を学割で春に奪い合う状況です。
他社と差別化したサービスは、失敗の可能性も大きく、たまたまうまくいっても資金力のある既存事業者にすぐに追いつかれます。
リスクが小さく比較的低コストで増やす方法は、他社から奪う事。ですが、すでに携帯を持った人は他社に移る手間を考え、十分な理由が無いと移行してくれません。 そこで直接競合する事業者はMNPに特典を付けています。
どのくらいの優遇策が必要か
おおまかに、現在の会社の解約金1万円+MNP2100円+ポイントなどの放棄5000円+家族割などのメリット放棄5000円+コンテンツの再契約 5000円+転出先の新規契約料3000円+手間(時間コスト)5000円=3.5万円 これが最低ラインです。 キャリアメールのアドレス変更、電波状況の変化なども手間や不安に。そこまで配慮すれば4.5万円くらいは必要でしょう。
これらの壁を越えて、更に既存事業者よりも魅力のあるサービス・魅力のある端末を用意して初めて移行してもらえます。
実はここまで検討してくれるお客はほとんどいません。他社の良さを認めて移るという事は、今までの自分の選択を否定することになりますから、そこを掘り返すのは販売側としてはかなり難しい。 携帯・スマートフォンという不慣れなジャンルに対しては「現状維持バイアス」が強力に働きます。
長期契約者を優遇しなくても簡単には転出しない
大半の人は現状を肯定し新しい環境に移りたがりません。特に優遇しなくてもいいわけです。
長期優遇をして欲しいと思うなら、どんどんMNPして引き留め策を出させるようにする必要があります。 MNP転出が増えると事業者に危機感が出てきます。顧客が他社と比較して劣ると判定したことになり、携帯会社がより良いサービスを出すきっかけになります。当然大きなコストをかけて獲得したMNP転入者に他へ再転出されないように長期利用者への優遇策も手厚くなります。
良いサービスを事業者から引き出すためには、長期契約者というのは実は消費者全体から見るとあまり良い存在ではないとも言えます。
<長期契約者を優遇すると新規契約者が不満
長期契約者を優遇し過ぎると、新規契約者の不満が増加します。新しいサービスを積極的に受け入れてくれるであろう新規客を逃すことになりかねません。 これをカバーするために学割が導入されています。
長期契約を優遇するサービスは他では意外にありません。あったとしても、それは長年の取引による信頼度の高さに根差した優遇策が大半。現在は新規顧客でもクレジットカードや割賦販売時に信頼度を測れます。長期取引による信頼度というのはかつてほど価値がありません。
携帯事業者にとって一番いいお客は、回線負荷が小さく、利用料金は高く、確実に支払ってくれる客。
二番目は新しいサービスの良さを理解しすぐに利用し、新しい収益源にしてくれる。さらにその良さを他の潜在客に対してセールスマンばりの宣伝をしてくれる客。iPhoneはそういう客が市場を広げました。
MNP転出の際の注意点
転出月に料金値引き特典が適用されず、思わぬ料金がかかることがあります。